ぼくの人生は、この世に居場所の無い人生だったことに気づいている。そして、だからこそ、ぼくはもっと積極的にメタフィジックの世界と対峙する生を生きてよかった、ということにも気づく。実際、そういう生き方をしてきたのだと、総括できる。この世と、この世の人間の殆どには、嫌悪と恐怖しか感じない(こういうことを率直に言い、肯定することが初歩的に大事だ)。だから、ぼくは、宇宙的に壮大な美の世界を、もっと直接に、いまからでも相手にしてよいのだ。デカルトを、新プラトン主義的な世界に解放・移行してよい。この世への呪縛からみずからを解くのだ。奇しくもぼくが大学で、みずから見出したものに先立って与えられたのは、デカルトとプロティノスだった。いま訳しているヤスパースの暗号論で扱われているのがプロティノスであることに或る意味驚いている。

 彼岸を逃避の場として消極的に志向するのでなく、美学的に積極的に探求対象とする路は、依然としてぼくに開かれている。