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私がフランス滞在中に、画家ジョルジュ・ルオーの実娘イザベル・ルオー女史から頂いた多数の手紙の中、最初のもの。私が高田先生の「ルオー論」の前半部を仏訳し(この欄で既述)、パリのルオー家に送ったことへの返礼・返信。その書き出しと結語(追伸が続く)。先生とルオー家との親交を証言する部分のみ次に訳出する。

 《彫刻家・高田は私達にとって「友人」でありました。ですから私は彼にたいする貴方のお気持ちは解ります。私達は彼のことをよく知っていましたから。彼はフランスをたいそう愛し、第二の祖国のように思っておりました。》

 私がなぜここに、辻邦生氏からの便りに次いで、〈著名人〉からの書簡を紹介するか、私自身の気持がある。私は著名人との親交を自慢したい根性はまったく無い。ただ「本物の人間」との交わりを私が持ち得る人間であることは、これを誇りに思う。同時に、本来このような人間であり、そのような生を歩んできた人間にたいしておこなわれた〈悪〉を、無限絶対的に〈許さじ〉という、宇宙を叩き割る私の〈怒り〉を自覚し表明するのである。