きょうは母の誕生日である。母はぼくを信頼していると言葉で直接ぼくに言った。父も「正樹、おまえを信頼しているぞ」、と、平素何も無いときにぽつりと、どうしたのかと思うタイミングで言ったことがある。いつもは男の嫉妬がらみでぼくを批判するのが常であったのにである。

 

その前にこれを書いておこうと思っていた。ぼくは学生時代ひとりで東京に暮らしていた頃、父のことなどもちろん知らないふたりの女性から、脈絡無くぽつりと、ひとりは面と向っているときに、もうひとりは手紙のなかで、「あなたのお父さんはあなたをとても頼りにしていらっしゃるわ」と、断定で言われたことがある。このふたりは互いに何の関係も無く、互いに全然知り合っていない。そして東京の女性らしく相手を批判する言葉に事欠かないのにである(それで、口がすぎたために現在ではふたりともぼくのほうからつき合いはお断わりしている)。そういう彼女たちにしても、まったくおなじ言葉を発するようなものをぼくに感じていたことも事実なのである。ぼくはこの事実が意味することを現在まで本気でかんがえたことはなく、そのおなじ言葉をただ憶えているのみである。

 

母もぼくに言っていたおなじ言葉の記憶から、きょうの日にこの言葉についてここに記したことにする。一方的にぼくを断罪する者らもいるが、そういうときにはこの言葉を思いだすようにしよう。

 

 

 

お母さん、お誕生日おめでとうございます 

 

あなたのおかげで ぼくはまだ生きています