(前節に関連して)石原氏の話で哲学的に覚えておくべきだと思ったことは幾つかあるが、そのひとつに、人間は(知識を司る)大脳とともに脳幹を鍛えるべきだという指摘があった。脳幹は人間が動物として生きてゆくのに基本的な働きをする脳部分で、「これを苦労して鍛えていない人間は人生において必ず敗者となる」 という外国の研究者の確信を据えている。これに触れてぼくは、高田さんの、ヨーロッパに行って強く感じたのは西欧人の「動物力」である、という証言を思い出した。そして、哲学者メーヌ・ド・ビランの、「我、抵抗に対して努力す、ゆえに我在り」、という自我自覚と、現代のアランの、「もの無しには考えない」という思想形成の鉄則を。ヨーロッパ文化は、〈脳幹文化〉であると言える本質面をもっているのではないか、と ぼくはいま発想しているのである。西欧文明の手堅さは、そこに根元があるのではないか、と。対して、頭が良く器用な日本人の陥穽は動物力の欠如にあることは、若者の自殺は日本が世界一多いと云われるのにも符合するだろう。

 無論、ぼくは、短絡な度を越した身心鍛錬称揚には問題があるとも思っている。

 

これは記しておこうと思った