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ベルナールは信仰の道において女性の存在を女性特有の徳とともに尊重・尊敬し、愛し、この愛を具体的な女性への愛として率直に表明した。信仰における象徴としては聖母マリア崇拝を熱烈に支持した。
本来内面世界への沈潜欲求が強く深い彼が それでも外的世界の改善のために引き出されたことは、心ある者には説明を要しないであろう。
『私は、貴方たち〔クレルヴォーの兄弟(修道士)たち〕の一人一人を心配し、気遣っている。 ・・・ 私はいまだに、私の愛する静かな生活を乱したり、私の請願に全くふさわしくない危険性の大きい事柄に専心せざるをえないでいる。私の意志ではなく、教会が必要としているために帰りがおくれてしまうことで貴方たちが怒るべきではないことは知っているはずでしょう。むしろ同情して欲しい。もっともそう長引くことはないと思っている。私が役立たずにならぬよう祈って欲しい。』
彼は、嘗ての教え子であったエウゲニウス三世に忠告する:
『私の喜び〔教え子の教皇選出〕には、心配と震えが入り混じっている。 …… 私には、貴方が上げられた地位も今や貴方がいかなる高さから落ちうるかということも分かっている。』
『誰が貴方に、遺産の取り決めをしたり、財産の分配をするような役目を授けたのか。そういうささいで世俗的な問題には、その本来の裁定者、つまりこの世の諸侯や王がいるのだ。 …… そんなことをしていたら、いつ祈り、人々に教え、いつ教会を教化し、法について黙想するのか。教皇庁は毎日神の法ではなくユスチニアヌスの法でなり響いている。これで正しいのだろうか。』
『貴方は、司教たちの最高支配者ではなく、彼等のうちの一人であり、神を愛するものたちの兄弟であり、神を恐れるものたちの仲間である。貴方はかれらのうちにあって、正義の模範、聖性の鏡であらねばならない。 …… 貧しいものの代弁者、不幸なものの希望でありなさい。』
何度もの手紙は後に「熟慮について」(Traité de la Considération)として纏められ、1945年、「教皇への助言」(Conseils au Pape)としてミニュイ社より出版される。