とくに東京人には、じぶんが好意を寄せる相手にたいしてすら、愛が無い。そして、それを当然見抜いている相手のつれない身振りにたいして、相手は人の心が分からない人間だとか、分裂気質だとか、平気で直接に言うのだ。自己反省の素質に欠けている。

 

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愛がない場合、人間は、相手を支配しようとのみする。相手にたいする優越欲は、すでに立派に、支配欲である。内心で、相手を、「どうせ たいしたものではないのだ」、と、躍起になって じぶんより下位に位置づけようとする、人間の秘かな奮闘ぶりを了解するだけで、「万人の万人にたいする闘争」が人間の日常状況であることを理解するだろう。 

 

愛のない思いはすべて罪である。 

 

しかし、すべての人間に愛をいだこうとすることは、非現実な偽善なのであるかぎり(ほんとうに愛する者はそれを知っている)、この罪もまた人間の生きる現実なのである。 ぼくはこの罪をも立派に生き貫こう。