初再呈示 

 

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ぼくはなぜいまヒュペーリオンを読んでいるのか、解る。いまの世で読むべきものだからだ。これいじょう 忙しいぼくのために言う必要はない。 

 

 

嘆かれるギリシャは いまの日本である。

 

 

 

《 それからわたしたちは現在のギリシアについて、多くを語りあった。二人とも、胸から血がしたたった。この品位を失った国は、アラバンダの祖国でもあったのだ。

 アラバンダは実際なみなみならず興奮していた。

 「幼い子供をぼくは見つめることがある」と、彼は叫んだ。「そして思う、その子が大人になって担わなくてはならぬ軛がどんなにいまわしく屈辱的であるかということ、その子がわれわれと同じように窮乏に苦しむだろうということ、われわれと同じように人間を探ね、美と真を求めるだろうということ、しかも、われわれと同じように自分ひとりであるゆえになんの実りもなく枯れしぼんでしまうだろうということを。そしてまたあれこれを思えば――ああ、いっそこの幼な子たちを揺り籃から取り出して、河へ投げこむがいいのだ。少なくとも、われわれの受けているはずかしめからこの幼な子たちを救うために」》

 

22-23頁