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5つ星のうち5.0 天上的な詩情を汲みとる演奏 

2021年6月24日に日本でレビュー済み

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天上的な詩情を汲みとる演奏、と、羽田さんの演奏を言うことができる(ただ詩情を汲みとると言うだけでは足らない)。彼女の演奏は まさに詩情の宇宙そのものなのだ。ふつうの人間は、楽譜をこれほど深く理解し解釈した演奏はできない。そしてこの演奏を可能にしている彼女のピアノ習熟度は、天才のそれであると、はっきり断言できる。ぼくは じぶんで楽譜に当たって、その創造的解釈のものすごさ(しかもあくまで楽譜に忠実に弾きながら)を、よく理解することができる。天才的な技術に基づいて、更にその上に、天上的と言えるほどの人間性の高さがないと、その宇宙をこれほどまでにわれわれに経験させてくれることはない。
(具体的なことを書きますと、羽田さんのアルバムのなかで、まちがいなく永遠の名演であると思うのは、このメジャーアルバム第一作目では、10曲目の「もう少し あと少し…」で、銀河の星の海に自分が持ち上げられる感覚に見舞われます。人間技とは思えない奇蹟的な演奏で、ピアノ一台なはずなのにオーケストラの音響に囲まれているよう。緻密窮まりなくて落ち着いていて、曲全体の雰囲気を最初から最後まで一貫して保っているのには心から感服します。この素晴らしさは無限に聴いてもいつも新鮮で、形容の仕様もありません。 第二作目のなかの「きっと忘れない」と、続けて奏される「IN MY ARMS TONIGHT」も、同様に素晴らしい、格調高く夢幻な想いに浸される名演だとぼくは思っているので、ぜひ経験してほしいものです。三作目の七曲目「こんなにそばに居るのに」も、彼女の情熱が籠められ、ほとばしっていて、魂を蘇生させてくれる名演です。四作目の二曲目「ハイヒール脱ぎ捨てて」は、まさしく海の幻影曲で、信じられないような深い情緒を経験させてくれます。彼女の最初のインディーズアルバムも、魂の原点を経験させてくれる作品として、ぼくは神聖視しています。人間的にも技術的にも不世出な羽田さんという存在をこれからも大事にしてゆきましょう。)