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いま、トーマス・マンの『魔の山』を読んでいる(かれの長編を読むのはふたつめだ)が、やはり普通の人間を主人公にしているところが特徴かと思う。文学史上で高揚されていなければ読まないところで、人間の掘り下げが浅い。じぶんの本来の深みから離れてしまいそうで、途中近くまで来たが、止めようと思った。しかし現在の世界があまりに馬鹿をやっているので、こういう小説でも、実際の世界を相手にしてこちらが馬鹿になるよりは、はるかによいと見直した。やはり人間の心の手になる文学は、実際の世界よりも価値がある。実際の世界より人間が息づいている。不満ではあるが、人間にとどまっていられる…