原理上無限な選択肢からじぶんが選んでいるようにみえる現実は、最初から唯一現実の運命であって、それいがいの現実というものは無いのではないか。受け入れられる人間や、受け入れられないで災難に思える人間も、この現実のなかで出会っているかぎりは運命の範囲内なのだ。これを承認することは、受け入れる受け入れないとは別のことである。だいたい、なんとなくずぶずぶと入ってゆく現実というものは、たまたま入ってゆくのではなく、それしか現実でないから入ってゆくのである。そういう感覚をわれわれは状況というものにたいして持たないであろうか。