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《・・・ ね、マルテ、わたしたちはみんなうかうか暮しているのね。世間の人々は何やかに気をちらし、ただ仕事だけに忙がしそうで、ふだんの生活などにはちっとも気を配っていないのです。だから、まるで流星か何かが飛んだほどにも、気をかけぬのに違いないわ。誰一人見ようともせぬのだわ。このごろは、誰も心に願いを持つなんてことはなくなってしまいました。けれども、マルテ、おまえは心に願いを持つことを忘れてはいけませんよ。願いごとは、ぜひ持たなければなりません。それは、願いのかなうことはないかもわからないわ。けれども、本当の願いごとは、いつまでも、一生涯、持っていなければならぬものよ。かなえられるかどうかなぞ、忘れてしまうくらい、長く長く持っていなければならぬのですよ」 》  

 

 

 

 

 

(新潮文庫91頁)