【視点】プーチン大統領は、世界における西側支配の時代は過ぎ去りつつあると述べた。西側はどのような反応を示す可能性があるか?

2022年10月29日, 10:30

ロシアのプーチン大統領 - Sputnik 日本, 1920, 29.10.2022

© Sputnik / Sergey Guneev

 / 

メディアバンクへ移行

 

リュドミラ サーキャン

すべての記事

ロシアのプーチン大統領は27日、有識者会議「ヴァルダイ国際討論クラブ」で演説し、世界における西側支配の時代は過ぎ去りつつあると述べ、この先は第二次世界大戦以来、最も重要で危険な10年となるだろうと指摘した。

プーチン大統領は演説の中で、ロシアは西側に抵抗してはおらず、新たな多極世界における覇権を主張していないと強調した上で、西側の「新植民地主義的」なグローバリゼーションと真の統合を対比し、「人間文明の交響曲をつくる」よう呼びかけた。

プーチン大統領は、新秩序は法と権利に基づき、自由かつ公正でなければならないと述べた。また国際貿易は個々の企業ではなく、多数派に利益をもたらすべきであり、技術発展は不平等を拡大するのではなく、縮小するものであるべきだと指摘した。

またプーチン大統領は、国際社会全体と各個人にとって最も懸念されるテーマの1つについて、「核兵器が存在しているうちは、その使用の危険性が常にある」と述べた。プーチン大統領は、核兵器使用の可能性についてロシアがはっきりと発言したことはなく、西側の指導者たちの声明に対して「ほのめかしによって反応した」だけだと指摘した。

 

 

プーチン大統領の発言に世界はどのような反応をしたのだろうか?日本を含む「集団的な西側」は結論を導きだすのだろうか?スプートニク通信は、国際政治に関するロシアの専門家たちに話を聞いた。

国際最新国家研究所のアレクセイ・マルティノフ所長は、プーチン大統領の演説の後に特定の結論を導き出すことができる、さらにはそれが必要だとの考えを示し、真面目な政治アナリストたちはすでに新世界秩序の概念について議論を開始したと述べた。

本日、世界の全メディアがこの演説をトップニュースとして報じたのには理由がある。もちろん解釈は様々だが… しかし、真面目なアナリストたちは新世界秩序の概念を議論している。そのため、それは彼らの立場に関係なく発展していくだろう。新たな世界秩序がどのような苦しみの中で生まれるかはさまざまな国の発展レベル、それらの国の政治的エリートの立場に左右されるだろう」

 

マルティノフ氏はまた、プーチン大統領が核兵器や米国による広島と長崎への原爆投下に言及したことについて、「おそらく日本の痛いところをついた」との見方を示している。

「広島と長崎への原爆投下はそれほど昔のことではない。日本はこれを覚えているが、これは政治において日本が核セキュリティ問題を含む西側路線に従うのを妨げてはいない」

 

モスクワ国立大学政治分析学科のアレクサンドル・コニコフ助教授は、プーチン大統領はその演説の中で、将来の世界秩序に関する自身のビジョンについて語ったとの見方を示し、演説は「対話への招待」であると指摘した。

「(これは)すべての国、利害関係を有するすべての勢力との対話への招待だが、もちろん、それはまず集団的な西側に焦点を当てている。日本に関して言えば、これは反ロシア西側連合の最も脆弱な部分だ

 

コニコフ氏は、過去6か月間に日本は自国の対ロシア政策を大きく変更し、西側の制裁キャンペーンに加わり、自国の経済を困難な状況に置いたと述べている。

 

 

日本は、自分たちにとって重要な領土問題とロシアとの平和条約締結の問題を解決するために長年にわたってバランスを模索してきた。数世代にわたる政治家がこれらの問題に取り組んできた。しかし現在、過去の成果はすべて消し去られている。日本は、せめて関係の小さなつながりを維持するために、なんらかの手がかりを見つけることに大きな関心がある

 

コニコフ氏は、「サハリン1」と「サハリン2」のプロジェクトで日本企業の権益を維持することがその小さなつながりとなる可能性があるが、「西側、特に米国との団結は、日本にとって非常に困難となるだろう...」と指摘している。

関連ニュース

「サハリン2」新運営会社、外国需要家の維持に成功=同社営業部長

オデーサは「争いのリンゴ」、または衝突解決のシンボル=露大統領

 

 

 

 

「よくも原発を撃てるもんだ」=IAEA事務局長、ザポロジエ原発の安全区域設定の遅れを批判

2022年10月29日, 05:34 (更新: 2022年10月29日, 07:55)

 

© AP Photo / Hiro Komae

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は28日、米国のシンクタンク「カーネギー国際平和基金」で講演し、このごろロシアに編入されたザポロジエ(ザポリージャ)州のザポロジエ原発の安全ゾーン創設をめぐる作業が迅速に進んでいないと指摘した。

グロッシ事務総長は次のように述べている。

「進捗は遅く、非常に遺憾だ。なぜなら私にとっては原発の周りに安全ゾーンをつくることは当然のことだからだ。よくもまあ、原発を撃てるものだ」

 

ザポロジエ原発はドニエプル川左岸にあるロシア西部・ザポロジエ州の原発で、川を挟んでウクライナとも接している。特殊軍事作戦の開始直後からロシア軍の保護下にあり、同州のロシア編入後の10月には国営の新運営会社が立ち上げられ、ロシア基準に基づいた運転に移行している。

 

 

度重なるウクライナ軍による砲撃で原発の安全性に問題が生じたため、9月初旬、グロッシ事務局長が率いるIAEAの調査団が査察。IAEAの調査報告書では、原発の周辺を「安全ゾーン」とする必要性が訴えられているが、その後も散発的にウクライナの攻撃は続いている。

グロッシ事務局長は「どんな軍事的目的や必要性があろうと、それには首は突っ込まない。もちろん、私個人の視点や意見はあるが…とにかく原発を撃ってはだめだ」とも述べている。また、安全ゾーンの設定は「できるかわからない」と疑念を示している。