人間について経験を積んだら、人間をますます愛さなくなるのが普通である。よほど自己中心的な望みに生きているのでないなら。人間経験は人間から離脱させる。ぼくはそれをとことん経験した者のひとりなのである。これは客観的な認識の結果であって、人間嫌いなどという主観的な思いの結果ではない。普段良識的でひとの心が解っていそうにみえる人間にたいしても、同情する意味が解らなくなってしまうほどのものなのだ。そのくらい、そういう人間の実際もまたひどいものなのだ。そういう経験をぼくは積みすぎた。ぼくのみなのであろうか。