そう、この作品を言うことができる。それにいま気づいたのだ。この戯曲は、いまの世のなかそのものだ。吐き気のする秩序転倒の、いまの世界だ。だから、これは在るべき世界秩序を、裏面から啓示しているのである。こういう啓示もあるのである。ネガによる啓示なのだ。 

 

やっとこのことに想到した。ぼくの境位がそこに達したのだ。 

 

 

この戯曲は、それ自体で現代の告発なのだ。とくにぼくが、翻訳では消した部分において。 ぼくはいま、消したすべての部分を復活させる用意がある。告発のために。

 

 

吐き気のする結末。しかしこれは戯曲なのだ。それを言うことが慰藉となる。そして直ちに言う、その戯曲が現実となっているのが現代なのだ、と。

 

 

 

何で人間が利益のために国によって公然と殺されなければならないのか。現実のほうが戯曲よりも吐き気がする戯曲性(非現実性)を実現しているのが今の世だ。 戦争は本来の現実ではない。現実の世界における非現実の悪夢だ。何ら存在論的な根拠が無く、そういう根拠を裏切ることによって生じている、その意味での非現実の幻想という現実である。

 

米国の本質は、非現実を現実にする悪魔である。