(つづき)この件において責任が無いどころではないのです。兄なのです、ジルベール・ドゥプレーヌを誘ったのは。兄が、彼を、自分たち夫婦の親密な関係の場に入らせたのです。私は確信をもって言えますが、初めのうちは、兄は、この知的で優雅で世慣れした青年が私の義姉とおしゃべりしたがるのに気づいて、嬉しそうでした。兄は、そこにひとつの誘惑さえ覚えていましたが、この青年に関しては、兄も、そのことに殆ど無感覚になってしまっていたのです。

 

(ヴィオレット) はっきり申しまして、お話をお聞きするのは、とても気詰りですわ。わたしに関係あることでは全然ありませんし…

 

(アリアーヌ) それはちがいますよ、ヴィオレット。今日ほど、私に、物語という物語をすべて繫ぐ鎖がはっきりと見えることはありません。その物語の中では、私たちは観客であると同時に演技者なのです。物語どうしは互いに照らし合います。これこそ小説家たちが良く理解したことであり、こうして彼らのみが、人生の真の意味を、光で照らすように私たちに明らかにするのです。私の兄は私のことを不自然だと判じています。なぜなら、私は、彼とは反対に、二人の罪人の味方をしているから、と彼は言うのです。強い精神の持ち主たち — 兄は自分がそのひとりであると誇っていますが — 、彼らが、しばしば、罪過とか、判決とか、刑の宣告とかの言葉を出すのは、何ととんでもないことでしょう。彼があなたに、私のことで、何かはっきりとしない警告をしに来たのは、一種の、ばかばかしい攻撃的な対立の態度によるものです… 憐れなフィリップ! (つづく)