(つづき)ちょっとあんまりですわ… どうしてそんなことを?… すこし現実主義に過ぎたでしょうが、それだけのことです。
(ジェローム) あなたの姉妹さんが現実主義であることは、あなたに殆ど劣らない位だということに、ぼくはやっと気づいてきました。(ヴィオレットに。)きみは、ぼくと結婚することで或る種の戸口を自分に閉めることになる、予め或る種の… 機会を断念することになる、と、明らかに思っている。バシニーのような連中はたくさんいるんだよ。もっと若い連中にだっている。そいつらの評判はもっと芳しくない!
(ヴィオレット) ジェローム! あなたはそんなこと、本気で思ってるの?
(ジェローム) 説明となるものは唯一これだけで、それに、これで充分じゃないか。とにかく、ぼくが最も嫌いなのは、きみが想像してきた、この種の道徳的あるいは感情的なアリバイだ。
(ヴィオレット) どういうこと?
(ジェローム) ぼくは、今では分かる、何のためにきみが、あんなに場違いで、あんなに気に障る、あの親密な関係に尽くしてきたのかということを… そうさ、きみはやっと自分自身で得心したところにちがいない、きみがこの日常の偽りを片付けるのを拒否しているのは、きみの新しい女友だちに配慮してのことであることを。
(ヴィオレット) それが、あなたがわたしについて思っていることなら、どうしてあなたがわたしに、あなたの妻になることを求めているのか、わたしにはよく解らないわ。