(ジェローム) きみにたいする彼の行状については、二種の意見はありえない。

 

(ヴィオレット) わたしだけが、彼の行状を判断する資格があるわ。

 

(ジェローム) きみが彼にたいして、理解し難い寛大さを示しているからといって、そういう資格がある理由にはならないよ。 

 

(ヴィオレット) 彼がわたしを惹きつけようとも放棄しようともしていないことを、あなたはよく知ってるわ。

 

(ジェローム) 彼はきみのうぶさをもてあそんだんだよ。

 

(ヴィオレット) 彼は全然何ももてあそんだのではないわ。わたしのほうが彼よりも人生をもっとよく知っていたし。彼は子供だったし ― いまでも子供だわ。わたしが彼に身を委ねたのは、あなたはよく知っているけれど、無分別からではないわ… 分からないけど、我が身を守らないという欲求のようなもの、将来に配慮しないという欲求のようなものからだったのよ。何かの用心や、何かのもの惜しみは、わたしをいつもぞっとさせたから… 筋が通っていないかも知れないけれど。

 

(ジェローム、苦々しく。) それにしても、きみは、そのことを誇っているよ。

 

(ヴィオレット) それは違うわ、ジェローム。その行為でわたしは高慢な気持には全然ならないし。ああ! 恥ずかしいとも思わないわ。そんなことはないけれど、それにしても分からないのは、どのようにして彼を判断すべきか、ということよ。(つづく)