(アリアーヌ) いまでは、彼女は不幸なひとだわ —— ほとんど漂流物のような。

 

(フィリップ) 彼女は充分、生きるためのものを持っている。

 

(アリアーヌ) 兄さんは、それで足りていると思ってるの? 

 

(フィリップ) 彼女の眼には、それこそは間違いなく本質的な事だよ。

 

(アリアーヌ) 今では彼女をそんなに低く評価するなんて、兄さんもずいぶん寛大ね! 

 

(ジェローム、ひじょうに神経質に。) クラリスはぼくたちの生活から出ていったんだ。

 

(フィリップ) そうではないように思える、正にね。

 

(ジェローム) ここではもう彼女のことを問題にしないようにして欲しい… だけど知りたいのは… ここに、ぼくの留守の間、誰も来なかったの? 

 

(フィリップ) きみは、ひじょうに奇妙な訪問を見る機会を逸したね。 

 

(ジェローム) フランシャール夫妻、でしょう? 気づいていましたよ。正面の歩道ですれ違ったばかりなんです。喧嘩しているような雰囲気でしたよ。

 

(フィリップ) 彼らをほとんど変えてはいなかったな! 

 

(ジェローム) 彼らは何しにここへ来ていたんですか?