(つづき)離婚は避けることができたと、私、いまでも思っているわ。

 

(フィリップ) このすべては馬鹿馬鹿しい。ぼくの考えの根本を言ってほしいのなら… 

 

(アリアーヌ) えっ? 

 

(フィリップ) あの頃きみの背中を押していた動機は、好奇心とは言わないよ、それよりもっとずっと強くて、そして、もっとはっきりしないものでもある何かだったと、ぼくは思う… 

 

(アリアーヌ) 解らないわ。 

 

(フィリップ) 多分、それはこう呼ぶべきかな、自分が際立ちたいという欲求、他の人々の生活のちょうど真ん中に自分が居たいという欲求… 奇妙だ。そうだな、きみがぼくに思わせるのは、あの、照明を消す演出家たちだ。きみは、照明が在ることに耐えられないんだ。きみは、あの、ぼくの知らない物語の中に入る必要があったんだ。でも、その物語は、ぼくに思われるのは… 

 

(アリアーヌ) 私は、兄さんが私のものだとしている欲求は、とても単純な名前のものだと思うわ。普通、共感と呼ばれているものよ。兄さんがそれについて作っている考えは、ただ、兄さんが共感というものをあまりよく感じることができないということを、示しているにすぎないわ。それに、たぶん、そのためよ、兄さんの立場が私のだったら、私ならぜったいに決心できなかったと思う行為を、兄さんがすることが出来たのも。