どこかで書いたかもしれないが、哲学とは、自己が本来的に納得のゆく満足を求める全人格的な探求の試みである、というのが、ぼくの人生の最初からの、じぶんの言葉による哲学定義である。これはいちばん確かな哲学の定義であると、ぼくは一生思うであろう。 ぼくは最初からこの定義を思っていたが、ある哲学同僚が、ぼくに、「古川は哲学とは何だと思うか」、と、尋ねたことがあり、ぼくは即座に、このぼく自身の言葉で応えた。それを聞いて、かれは、「じぶんが聞いた応答のなかでいちばん納得した」、と、ぼくに言った。ぼくに尋ね、ぼくの答えを聞いたのは、つまり、ぼくがじぶんの哲学の定義を言った相手は、かれだけだった。 

 

 

路は違ったが、いま思えば、ぼくが誠実さを感じたのは、かれだけだった。

 

 

そのくらい、誠実さを、言うだけでなく実践している人間はすくないのだ。そのことにぼくは愕然とする。