(アリアーヌ、それには答えずに。) あの高地で、この冬の間ずっと、あなたはお気づきになるはずもないですけれど、私はあなたのことをたいへん思っていたのです。ジャンヌ・フランカステルさんがクリスマスに私を訪ねて以来です。彼女はあなたにたいして真の愛情をいだいています。
(ヴィオレット) そう信じていらっしゃるのですか?
(アリアーヌ) そう断言すると、あなたをびっくりさせることになるのですか?
(ヴィオレット) ジャンヌはあの人々の一人で… いえ、ごめんなさい。
(アリアーヌ) ぜんぶおっしゃって。
(ヴィオレット) 他人への好奇心が幻想を生むことがあると思われる人々の一人かと。わたしは、じぶんが好奇心を触発しているという印象を、いつも持っていました。それにしても、どうしてなのかしら。
(アリアーヌ、小声で。) それはそんなに不思議なことだとは思えません。彼女は訪問の際、あなたの写真を持っていて、それを私に見せてくれました。
(ヴィオレット) 解りませんわ…
(アリアーヌ) それはアマチュアの撮ったしごく普通の写真でした。でも、あなたの眼差しが私をたいへん感動させたのです。音楽家の眼差しです。それ以来、私はあなたに… おおいに助けていただきたいと思っていたのです。(つづく)