愛の定義は多様であって、個々人が自分の経験から自分の定義として愛を知る。神とは何かと問うこととおなじくらい、愛の問い方は多様なのだ。神の神学とおなじくらい、愛の神学はあやういものである。ヤスパースも、絶対的意識の中核として愛を語るが、愛とは何かを説いているのではない。ヤスパースは、みずからが愛と呼べるものの経験を語っている。換言すれば、愛とは何かを自己を懸けて問うているのであって、そこが理解できるかどうかが大事なのである。