(バシニー)(つづき) 私は、あなたがいまお示しになられた、まったくのところ、かなり品のない恩知らずさは、忘れることにやぶさかではありません。私の知るところではありませんが、あなたの胆嚢気質のせいにしたいものです。それにしても、私はあなたに関心を持ったのですから、これから、とりわけ、相当な費用をつぎ込む冒険、そう、確かに冒険ですから、その冒険をする前に、私が関わるひとのことを知る権利があります。

 

(フェルナンド) バシニー様! 

 

(バシニー) あなたは、金銭次第のような方ではありません。あなたを眺めているだけで充分です。しかし、ほかのさまざまな仕方で、自分の人生をしくじることもあるのです。そこのところは、私も安心していられません。 

 

(ヴィオレット) 仕方のないことですわね。 

 

(バシニー) 解っていらっしゃいますか? もし私があなたを見捨てたら、あなたにどんなチャンスもありません。私は、有名になるようになどと言っているのではなく、悲惨から免れるように、と言っているのです。よく聞いてくださいね、「悲-惨から」です。そうしないと… そう、その場合には… 

 

(フェルナンド、うめくように。) わたしたち、誰とも面識がありません。おつき合いが無いのです。もし、あなたがヴィオレットをご存じでなかったら… 

 

(バシニー) 私は彼女を存じていると思っておりました。しかし、あの外出の後では… まったく、説明してください、いまいましい!