(フェルナンド) それは根本的な性格じゃありませんわ、すぐにお気づきになられたように。

 

(バシニー) 私がもうちょっと気づく感覚がなかったら、災難でしたな… 彼女は成功できます。それは確かです。私が言おうとしたのはそのことではありません。彼女は才能のある女性です。ありふれた才能ではありませんよ。国立音楽院を卒業するありふれた娘たちは、みんな… 悲惨です。出稽古をして回るうちだけは良いですが。わずかな謝礼金です。レッスンを受け持つ機会はもう滅多なことでは見つからなくなっていますので、卒業生の半数はけっきょく… 

 

(フェルナンド) 客引きになり果てるのですね。 

 

(バシニー) そしてそこでもなお、いまいましい競争があるのは間違いありません。そのうちのひとりは先週、水に身を投げたことを私は知っています。その娘は七つの大罪よろしくけがれていたのは本当ですが、持ちこたえている娘たちですら… 

 

(フェルナンド) ぞっとしますわ。 

 

(バシニー) 現代は、凡庸な者たち、虚弱な者たち、とりわけ、多分、お人好しな者たちにたいして、情け容赦がありません。私の申していることの意味はお解りでしょう。(つづく)