(フェルナンド)(つづき)私のほうはサナトリウムにおりました。彼女はパリでほとんど誰とも面識がなくて。世間で読まれているもの、小レストランで話されているもの、すべて知らないんです… もちろん私は彼女に気をつけていようとしましたわ。でも離れていて、通信でですので、たいしたことはできません。そして、各人は、自分の経験をしなければならない。そうでしょう? 

 

(バシニー) その経験はちょっとやっかいなものに思われますな。娘さんは可愛らしい、が、あらゆる観点からしても、良い空気の地で生活させたほうがいいでしょう。 

 

(フェルナンド) 私の意見もそうです。でも、現在まで、ヴィオレットは娘と離れるのに同意したことがないのです。この種の感情と闘うのは、とても難しいことですわ。 

 

(バシニー) それを感傷癖と私は呼びますな。子供にとっての関心は、田舎に送ってもらえることです。これは、この訪問をおしまいにする手でもあります。なにしろ私の訪問は、あなたのお姉さんにとってそんなに気持ちいいものではないはずですから… 

 

(フェルナンド) よく承りました。あなたのお力で、ヴィオレットが自分の義務を理解しますように… 

 

(バシニー) 彼女はどうにも頑固なふうに思えますな… いや! それは彼女の立派な気質の代償なのだと、よく解っております。