戯曲での会話のニュアンス、その流れをつかまなければならない。6年前に18頁まで訳していた。 

 

孤独に沈潜したいぼくにとって、戯曲の人間関係の世界に関わる意味があるのだろうかという疑問もあるが、訓練と思い、つづく19頁の原文をとりあえずここに掲載し、訳を試みる。 

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(バシニー) 彼の行状は最低でしたな… ええ、私は知らされていますよ。家計がなっていないと聞かされています。

 

(フェルナンド) 彼女はどうってことありませんわ。

 

(バシニー) 彼女の持参金はヴィエイヤール銀行の株暴落に呑まれました。

 

(フェルナンド) まあ!

 

(バシニー) そのあげく、彼はもとの木阿弥になったのです。

 

(フェルナンド) ともかくですね、そんなことでしたら、ヴィオレットは彼と決して結婚しなかったでしょう。それはないと思いますわ。

 

(バシニー) ここだけの話にしますが、彼女が嘗てこの不幸な男のことをかいかぶることができたのは驚きです。彼には全く気概がなく、勝負を放棄したのですから。

 

(フェルナンド) 私の意見をお聞きになりたければですけれど、彼らの間には仲間意識のほかは決して何もなかったと思いますの。

 

(バシニー) ドアを指して。 同じことですな! 彼女は行きましたよ、それが仲間意識とは! 

 

(フェルナンド) いえ、私が言おうとしたのは… いまの時代にですね、とりわけアーティストどうしの間では… 彼女はとても若く、とても迷っていたということです。(つづく)