思想や哲学もまた、人間が想像力を介して創造するものであることは、芸術や文学がそうであるのと同様であることを、ひとはしばしば忘れがちになる。まるで哲学はいわゆる現実の本質なるものの複写であるかのように(思って忘れるのである)。しかしじっさいは、哲学・思想もまた、芸術などと同様に、人間が「生きる」ために創造するものなのだ。人間がそれによって人間として生きるものなのである。
そうでない思想・哲学が多いとすれば、芸術・文学も似た傾向のものがある。本来の哲学、そして本来の芸術をも、指し示したヤスパースのスピリットは、人類の松明のような燃える価値を発している。
ぼくには、哲学道にはヤスパース、芸術道には高田博厚がいる。この両者がものを視る視点は真に根源的であるゆえに同時に真に普遍的である。アンドレ・マルローもそれをたしかめさせた。