ほんとうにひさしぶりに、ふと気が向いて、昔馴染みきったベートーヴェンを深夜に聴いた。これまでさんざん離れきっていたのである。そして、ベートーヴェンに一貫しているもの、それは生を支える意志であることをたしかめた。一貫して、「ベートーヴェンの品格」なるものがある。これは彼独自の品格であり、彼の個性であるが、そのままで普遍的な内実をもつ品格として経験される。この品格を言葉で言えば、「生を支える意志」の品格であるとぼくは言う。これはベートーヴェンがぼくたちにあたえてくれる善きものである。ただの彼の個性にとどまらない。真の創造的個性は、いつもそのまま普遍的な感動となるものだ。彼も彼自身になりきることによってそれを証明(照明・実証)してくれた。この堅固さはどこから来る。それがいつも傑作に触れて感じる問いだ。