かつて、ニクソン大統領は、歴史的な訪中に先立って、中国情勢等に関するアドヴァイスと確認を得るため、アジアの現状に詳しいフランスの大知識人アンドレ・マルローをホワイトハウスに招聘し、日本のこともふくめ、懇談しました。そのなかで、ニクソン大統領は、日本はアメリカの核の傘に置いていなければ、ソ連から核兵器を買い自衛するだろう、という見通しを披瀝し、マルローもこれに首肯したそうです。この情報は、竹本忠雄氏の著『マルローとの対話』で公開されている記録に拠るものです。日本の政治家たちは当時、同盟国アメリカの頭越し外交に、切歯扼腕したそうですが、ホワイトハウスでの会談を竹本氏に打ち明けたマルローは、その際、力を籠めて竹本氏に、「日本は選択することができるのだ(そのことを忘れるな)」、と強調したそうです。日米同盟は米国の覇権のためであり、日本の力を封じておくためのものです。日本は米国の属国ではなく、米国にとって潜在的脅威なのです。この点を忘れずに米国と交渉せよ、ということが、マルローの日本へのメッセージのようです。現在のように、米国政権の後ろ盾となっている製薬会社のために日本国民を差し出す日本政府は、長年このマルローのメッセージを無視して、みずから米国の属国となって繁栄しようとしてきた(このほうの選択をしてきた)「つけ」に直面していると言えるでしょう。これに懲りて、日本は今からでも根本的な政策転換をし、自国民のための政策へと舵を切らねばならないことは、言うまでもないでしょう。