高田博厚の思想と直結するゆえに、このアンドレ・マルロー自身の言葉をここに引用する。 

 

≪「ギリシャ、ローマ、中世は、なによりもまず彼らが遺した記念碑、彫像、詩ではないとすれば、いったい何であろうか。アレクサンドロスは、数多の戦歴によってその貌(すがた)をわれわれの脳裡にきざみつけているのではなく、彼が呼びおこし、それゆえ彼をわれわれのもとへと運びくる夢によってこそ、われわれの記憶にとどまるのである。芸術家たちによって知られぬあいだは、征服者といえどもたんなる勝利した兵士にすぎない。彼らの生を永遠化するのは、歴史家ではなく、人間の夢にたいする芸術家の共感なのである。」(Les Voix du silence, 六一八)≫ 

 

 傍線引用者。

 

中田光雄『諸文明の対話 マルロー美術論研究』66頁 

 

 

 

ところで、マルローは一時期為政者だったが、いまの時期彼が為政の地位にあったらどうするだろうか。もっと知性的な施策を講じるであろうことを期待する。現在のフランスは過去の歴史における暴力性の部分がよみがえってしまっている。