人間の最もおそろしい二律背反(アンティノミー)は、国や世界という全体が問題となるとき、個々人は問題でなくなるということだ。このふたつは次元が異なる。為政者は個々人のことをかんがえることができない。ここから戦争も不可避的に生ずる。現在、大規模戦争が起こりにくいのは、為政者が個々人の命に配慮するようになったからではなく、兵器の高度化により、戦争そのものが起こしにくくなったからである。従来の戦争ではないような、代理的形態の事実的戦争ならば、これをいかにして起こそうかと躍起だろう。その現われが、歴史認識問題であったり、戦略的ワクチン接種であったりする。