日本人を代表して、きみに ごめんと言いたい | 高田博厚先生と友と神に ・ 形而上的アンティミスム序説
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裕美ちゃん、きみのことを思って起きてきたんだよ。きみは三十代、作品を世に出さなかった。かつては短期日の間にあれだけ密度の深い個性的な世界を各アルバム毎に創造して驚嘆させてくれたきみが、その後も創造活動を続けたら、どんなに素晴らしいことになったか ! ! ! って、思ってね。演奏家にとって三十代という時期は、どんなに大事な時期であろうか、と、素人でも思うよ。ましてきみのような、技術だけでなく魂が、正真正銘の天才にとって、どんな途方もない価値が、きみだけでなく世界全体にとってあったか ! ! ! ぼくは信じているんだよ、きみの途方もない価値を。おこがましく言わせてもらえれば、きみが精神的な方向を間違いなく歩みさえすればね。そう言わなくとも、ぼくはきみの、演奏に現われている、しっかりした人間性を尊敬しきっているんだ。きみの奥が深い人間性は、神のようだ。それが現われているきみの演奏は、神そのもののようにしっかりしていて完璧だ。古代ギリシャのなかのひとりの神のように、普通の人間を超越している。それが解らないのは、ただの愚物なのだ。周りに愚物が多すぎたのではないのかい? どうしてきみがその後も活躍してぼくたちを幸福にしてくれる作品を創造しつづける場が、なかったんだろう? これは社会の文化的問題だ。ぼくが力になれなかったことが残念だ。きみはじぶんでその後の路を選んだのだろう。それをきみが後悔しないで仕合わせであればいいと望んでいるが、やはり、とてつもなく残念だなあ。日本人を代表して、きみに、ごめん、と言いたい。
尊敬しきっている、愛で結ばれている裕美ちゃんへ
きみを支えたかった正樹より
2021.9.3 4:19