初再呈示 

 

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前の節「奇蹟」の補足ともなっているここには、いまのぼくの、人間の「魂」の問題における、ガブリエル・マルセルの課題と、高田博厚の課題とが、奇しくも並べて呈示されているので、再度、再呈示する。

マルローは、ぼくと同じといってよい問題意識の視野をもっていることを、あらためて認識する。すなわち、人間の本質をめぐる、哲学と芸術の意味と意義の問題である。 こういう、人間問題への形而上的実質性の高い充全な意識視野は、フランス文化圏のみに特有のものだろう。

 

 


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『われわれの生物としての生の傍らに、年代記の時間とは関係のないひとつの自己意識があることをしかと認識しなければならない。〈私〉とは誰にとっても或る年齢の私、或る場所の私を意味するが、しかしまた、その人間において時と処を超え、しかも無意識とはけっして同一でないところのものをも意味する。〈非時間的なものがわれわれの内部にある〉とベルクソンは書いている。〈そしてわれわれはそこに、われわれと世界についての、より偽りの少ない、より実在的な意識を見出す〉、と。』 (L'Intemporel, Gallimard, 1976) 

 

『諸文明の対話 マルロー美術論研究』中田光雄著(1986年 みすず書房)より、マルロー原典引用文(105-106頁)。 

 

 

 

 

『傑作のおのおのは世界のそのつどの浄化である。そしてそれらに共通のものが、傑作の存在理由について語ってくれる。世界への隷従にたいするおのおのの芸術家の勝利は、歴史の広大な展開のなかで、人間の運命にたいする芸術の勝利に合体する。

 芸術はひとつの反-運命である。』 (Les Voix du silence, Gallimard, 1951) 

 

同(59頁)。