「霊魂」ではなく「魂霊」である。このちがいは全く大きい。人間主義に照応するのは「魂」の世界でしかなく、「魂の世界」のヴィジョンに基づいた霊の世界すなわち「魂霊」の世界のみが、真面目に対面するに価する超自然的境域である。

 

 

 

 

音楽は海のようなものであって、海面の運動だけ知覚する者には、それだけのものである。しかし海面の運動は海全体の運動を前提している。この「海全体の運動」こそ、奏者の魂の宇宙の運動である。ぼくはそれを感じたい。海面の下に潜り沈んで、演奏の魂と振動し ひとつになりたい。きみの演奏を聴くということはぼくにとってそういう行為なのだ。それは「魂霊」の行為なのだ。それにぼくはマルセル的実存の意味において存在論的・形而上的な秘義として真剣に参入する。魂を根源とする霊の世界をぼくは肯定しているのだ。