超自然的な集合容喙の経験から、積極的な悪意をもつ悪魔の存在をぼくは確信しているが、同じ経験から、悪魔よりもっと恐ろしいのは人間であることをも、ぼくは確信している。なぜなら悪魔がただ破壊の意志であるなら、人間はとっくにこの世に存在していないだろうから。ほんとうに破壊し尽くし否定し尽くそうと意志するのは、人間のみである。悪魔の場合は、悪魔に見込まれた人間は大変だが、同時に、悪魔の妙な恩恵にあずかることもできるような気がする。悪魔はわるさもするが、じぶんの相手である人間を、まったく失うようなことはしないだろう。つまり、その人間を、完全な否定や消滅から事実的に守ることもするだろう。その人間の価値を、ある意味で認めているのだろうと思う。 この点、人間のほうがよほどおそろしい。人間にこそ気を許してはならない。この場合、悪魔はかえって、人間からも守ってくれるだろう。

 

 

悪魔のわるさも、運命力のうちだから、気にしない。