曲の演奏は、慣れるほど難しくなるのではないか。習得した習慣のメカニズムの役割が大きくなり、奏者の精神の関与がそれだけ困難になるからである。ゆえに、芸術家の精神の最も大事な本質は、習慣がまだ支配せず、精神が隅々まで支配している、最初の作品に最もよく感じられ、実現されている、と言えるのではないかとぼくには思われる。 

 

最も精神的な感動を与えるのは、最初の作品である。

 

 

演奏家は、慣れにたいして闘わなければならない。楽譜をいつも見て演奏することは、その努力の現われだろう。