あのね、 

 

ええ、 

 

ぼくも間接的・直接的に、いろんな〈名士〉に会ってきたけど、ぼくがいちばんいいなあ。 

 

間接的にもって、歴史上の人物も入れてってこと? 

 

そうなんだけどね、ここでは、ぼくが文書等で接することのできている人物ってことで充分なんじゃないかな。いろいろ偉大な諸点があることは勿論だけどね、それでも、ぼくをぼくたらしめているものを感じると、ぼくにとってはぼくがいちばんいいと思うんだよ。だから、かれらに比べてぼくを卑下するものは、正直、本質的には何もない、むしろ、かれらこそ、ぼくに及んでいない、と感じるんだよ。 

 

あなたいがいの人がそれを言ったら、大変でしょうけれど、あなたが言うと、なにか納得させるものがあるわね。 

 

そこが大事なんだよね。 

 

あなたは、自信をもつことが大切よ。それしかあなたを支えるものはないのだから。 

 

自信をもとうとしても欺瞞でしかもてない者がほとんどすべてなのだからね。 それにしてもぼくが自信をもつことは他にとってはおそろしいね。ぼくの判断は審判なのだからね。無礼をした者は、反省しなければ全部地獄ゆきだよ。ぼくは真の人間として、寛容を否定しているからね。

 ぼくが、悪魔よりも憎んでいるのは、現実の人間なんだ(そのことがますますはっきりしてきた)。悪魔をどうやって憎むんだい。あれは、ああでしかないのだよ。それより人間の分際で魂を傷つける偽善者どもをこそ、だね。