ふっと気づいたんだ、事実をね。 品格、品格というけれど、ほんとに品格のある人間なんて、数えるほどしかいない、ということを。 全然いないわけじゃないけれど … 

 

 

 

 

 

 いちばん腹が立つのは、ぼくが他にたいして自分の品格にふさわしく自分を扱っていないこと。 

 

 

 

 穏やかで謙遜ですらある者が、じぶんを抑えている分だけ、いちばん偽善者で高慢であるのだろう。 直接的(無媒介的)な寛大は、すべてそうだろう。 反省できた分しか、ほんとうに寛大ではありえない。しかもそういう反省は賢者でも稀にしか、わずかの間でしか、保っていることはできない。 

 

 人間は、偽善を為さねば急場を凌げまい。だからと偽善を誇るわけにはゆくまい。ところがみんな誇っている。じぶんはなんと寛大で謙虚なんだ、と。わらうこともできない深刻で単純なからくりである。