ヤスパースの精神病理学によると、自己教育療法の要諦は、感情の解放と、意識による抑制の、リズムとバランスにあるようだ。このことは正常者も同じだろう。心の病気は、このバランスとリズムの喪失であり、一局への固着だとも云うことができる。解放過多な者には抑制が必要であり、抑制に過ぎる者は、感情的なものの解放を覚えねばならない。じぶんではなかなか判じることのできない精神的偏りは、気づくのに時間がかかることもあるだろう。そして自己教育そのものにとって、問題である「偏り」の時期も、経験として必要な場合もあろう。それが人間というものだ。期が熟するとき、自己療法は案外、自動的・自発的におこなわれることもあろう。生活様態の、一種の変貌は、そのような内発的動機によっても起こる。そのときにはそれに従うような、自己への柔軟な対応の態度が、望ましい。心理学や精神医学がそれを奨めるからではなく、自分で感じることによって(そうしてこそ実存的変貌となる)。