愛がない場合、人間は、相手を支配しようとのみする。相手にたいする優越欲は、すでに立派に、支配欲である。内心で、相手を、「どうせ たいしたものではないのだ」、と、躍起になって じぶんより下位に位置づけようとする、人間の秘かな奮闘ぶりを了解するだけで、「万人の万人にたいする闘争」が人間の日常状況であることを理解するだろう。 

 

愛のない思いはすべて罪である。 

 

しかし、すべての人間に愛をいだこうとすることは、非現実な偽善なのであるかぎり(ほんとうに愛する者はそれを知っている)、この罪もまた人間の生きる現実なのである。 ぼくはこの罪をも立派に生き貫こう。ぼくにおいては この罪は罪ではないことを知っているから。