この節題に表明された理念の具体例はデカルトの哲学である。哲学には「神秘」と「合理」の二面がある。その根拠は、われわれの生そのものが この二面を欲しているということである。人間の生は、「神秘」と「合理」を、生そのもののために欲している。ぼくはまず「神秘」、ついで「合理」と云う。人間の欲求は、根源的には「神秘」を必要とする。これが欲求の第一である。それから、この「神秘」をこの世で護るために、この世、とくにこの世の人間にたいする精神武装の必要から、「合理」の構えを欲するのである。 デカルトの哲学は、読み方、解し方によって、この理念の実現のために、いくらでも面白くなる。 

 

ただ合理主義とか神秘主義とか云うのはつまらない整理である。じっさいには真の哲学者は両方をもっており、みずからを主義づけることはけっしてない。主義はいつも亜流による表面印象の産物である。