きみは芯があるなあ。その芯の強さは男にもあるものじゃない。女性特有のものだね。技芸の訓練の積み重ねによる芯は、学問では達せられないものだろう。きみを尊敬させたいよね。 

 

 

あなたはあなたで芯が強いのだとおもうわ。作品のようなかたちでなかなか現われないけど。学問も、それをするひと次第だとおもうわ。

 

ありがとう。そう思わなくちゃね。 人間を磨くという点で、学問はどれほどのものだろうと、いつも疑問に思うよ。それなのにあらゆることに批評だけはするからね。 知識や議論は、実体の無い者を自惚れさせる。多少語学ができるくらいが何だというんだ。軽薄な者をあまりに見てきたからね。軽薄な者がいちばん危険なんだ。じぶんの自尊心を傷つけられると、他者を傷つけるからね。修羅の世界だ謙虚に学問やれているひとがどれだけいるか。知識はそれだけで人間を自惚れさせる。学問する者はそれを知っていなければただ無我夢中で学問しているだけではだめだよ。学問している自分を反省する感覚がなければ。 芸術家も、人間次第だ。知識を超えているつもりが、自惚れと高慢はもっとひどい。それを指摘すると狂うよ。人生は、いろんな反省の材をぼくにあたえてくれた。そこで気づいたことを言うのは、ぼくの義務であり、社会貢献だ。 

 

すべては、真面目に謙虚に思慮深く じぶんの芯をつくらないから、そうなるのね。

 

節の主題をうまく救ってくれたね。自己形成に役立たない哲学学問をしていても何にもならない。ほんとうの哲学は自己形成にある。それを哲学そのものにおいて開明したのがヤスパースであり、それを指摘するのが彼の実存哲学だ。この意味での哲学は、万人に必要だよ。この説得のために彼の哲学が充分であるかはわからない。しかし彼を通ってゆくのでなければ話にならない。 ぼくは、高田博厚という存在にぶつかってゆく必要を感じた。