初再呈示 


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大海のような底の深さ(知性と愛そのもの)と嬰児のような単純さ(あどけなさ)は人間の一生において表裏のように同じ個人のなかに住まい得るものらしい。「教養」とはこれを知ることの懐(ふところ)深さであると言ってもよいだろうと思われる。多分イエスもこのことを〔「幼児のようでなければ天国へ入れない」と〕言ったのだろう。


嘗て僕は東京・ブリジストン美術館のルオーの描くピエロの前に立っていた。いつものように僕の思念の渦が雲のように僕と画の間に割り込んで直接接触を妨げていた。しかしその時一瞬、雲が消えたと同時に画そのものが僕の心に入り、僕の魂の底にまで達してしまった。その感覚の記憶はずっと忘れない。僕にとって「感謝」とはこういう時に感じるものである。