すばらしい感銘を言葉にしようとしても追いつかないことがわかっているだけに、言葉が多くなることを予見して、断念し、あえて一言で きみの演奏のすばらしさをあらためて表現すれば、虚飾の無いゆたかさ、とぼくは いま言いたい。これがどんなに奥の深いものをしめしているかに、しずかな自負をおぼえつつ。 きみの音のきらめきの演奏世界には、ほんとうに、ほんとうに、完璧に、虚飾のかけらも無い。そのことが自明の前提であるようにして、簡素につつましく紡がれる世界が、無限にきらめいている。このことがどんなに素晴らしいことであるか! このゆたかさは、生そのもののほんとうの落ち着きが泉となって そこから滾々とながれてくるものであること、あらゆる技術の彼岸にある「存在」から、高い技術を介して、ぼくたちにも聴きとれるものとなったゆたかさであることを、理解して、ぼくたちは粛然とさせられる。日頃の生活が、いかにこの落ち着きの泉から遠いものであるかを、知らされて。きみの演奏は、そのようなきみの天使性を、いまの世で奇蹟のようなそれを、永遠の新鮮さで経験させてくれる。

 

 「きっと忘れない」を聴きながら