ぼくは、この世の生で、凡庸な者たちの間で生きるために、日常、嘘でやり過ごすことを、要所要所でやってきた。そうでなければ平穏に生きられないと思ったから。正確には、「ぼくの言葉」を使わずに、彼らが理解した気になるような「世間流通の嘘言葉」でやり過ごしたのだ。だって、彼らを相手に、哲学論議をほんとうにやる気になるだろうか。「ぼくの言葉」を使うとは、そういうことだ。徒労と戦争になることは察しがついている。哲学研究者たちの世界に入っても、同じだった。そこでは、哲学研究者たちに通用する「世間流通の嘘言葉」を使わなければならないだけで、本質は同じだった。みな、いいふうなことを言っているが、底の浅いこと甚だしかったのだ。日本の哲学研究者など、世間人と全く同じで、同根である。これがいちばん日本の深刻な問題である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
教育167 12日