ロジェストヴェンスキーが亡くなったそうだ。87歳。 ぼくは彼の指揮のモスクワ放送交響楽団で、外国のオーケストラの生演奏を始めて聴いたのだ。よく日本の地方にまで来てくれたと思う。曲は、ベートーヴェンの交響曲第七番と、チャイコフスキーの交響曲第六番「悲愴」。曲自体も初めて聴いて、特にチャイコフスキーには心底感動し揺さぶられた。中学くらいの頃だったと思う。これで彼の指揮・楽団の演奏にとりつかれた。当時でもすでに魔術師とか云われてカリスマ扱いされていたことを記憶している。彼の指揮の様子をみればよくわかる。他の真似できるようなものではない。陳腐で凡俗なものをみて、その毒消しをしたいときには、彼の指揮を観るのだ。ほんとうの高い意味での「名人」だった。 

 

 

どんな人間でも亡くなるのを不思議に思うが、この世にいることが、仮滞在なのだとしたら、定住してもいられないのだろう。

 

 

 

 

(ぼくの精神的に尊敬する指揮者は、ブルーノ・ワルター、フルトヴェングラー、ジャン・フルネ などである。 ロジェストヴェンスキーには、その天才的な才気に関心があり、感じ方がちがう。彼のことを「名人」と言ったのはその意味である。)