『 本書が五百年余りに亙ってキリスト者に及ぼした広い深い影響はおよそ測り知ることのできないものである。聖書についでこれほど深い知恵と、明徹な思想と、人を回心させる力とを持った書物はほかにないであろう。それ故、ある人はこれを「光と命の書」と呼び、またある人は「この書はキリストが天から地へもたらした光を反映し、キリスト教の最高原理を最も忠実に表現している」としている。』 

『もちろんすべての書物に伴う時代や環境の制約は、本書もまぬがれることはできない。そこには中世紀のひびきがあり、修道院のにおいがある。しかしそのあらゆる制約を越えて、あらゆる時代の人、あらゆる国の人、さまざまな教養とさまざまな身分の人に、いつも新たな迫力をもって訴えるのは、著者がゆるぎなき信仰と共に、人間の魂の本質に対する深い把握、人間性への鋭い洞察を持っているからにほかならない。』 

 

  『一九五五年 クリスマス近き頃に     訳者しるす』  

 

 

 

 

『トマス・ア・ケンピス キリストにならいて』 池谷敏雄訳 新教出版社

 解題より 

 

 

 

傍線 引用者。 人間認識と信仰とが充分に合わせ持たれることは きわめて稀であるとおもう。