よく知られているアランの「意志のオプティミスム」は、彼の信仰である。それはまず自分の生命力を穏やかに信ずることを中心として、自分の回りの存在と事象を、穏やかに善意に解する。根拠があるからではない。だから意志に基づくのである。人生への最上の療法であることに気づくであろう。 「意志することは信ずることである」      

 

 

創造主の、情念の網の法則に抗して、神の秩序を建てるのは人間の意志である。 しかも質料次元(人間情念)の法則を知悉している反省に基づくばかりか、それいじょうのことをアランは感知している。 

 

 

この、人生の苦労人であり最高の智慧者である哲人も、行為そのものに問題がない場合でも、行為に乗せる情念(情は念である)には気をつけなければならないことを知っていただろう。彼の飄々とした、情念を鎮静させる工夫を会得した者としての表情は、自分を守る最も堅固な城壁なのである。