これも、言葉をして言葉たらしめるべく置いておくために記す:
「 不安定な人々の最中を、眠っている樹木を揺ぶるように、クリストフは通って行った。彼は自分の考え方を彼らに真似させようとはしなかった。自分で考える力を彼らに吹き込んだ。彼は言った。
「君たちは謙遜すぎる。大敵は神経衰弱的な疑惑だ。ぼくたちは寛大で人間的であり得る。あらねばならない。けれども、ぼくたちが善と信じ真と信じていることを疑うことは禁物だ。信じているものは、守らなければならない。ぼくたちの力がいかにあろうとも、ぼくたちは棄ててはいけないのだ。この世界では、最小の者も最大の者と同様な義務を持っている。そして――(自分にはわからないが)――力も持っているのだ。君たちが独りで反抗していることを、無駄だと思うな! 強力な意識、みずからを肯定する意識は一つの力なのだ。君たち自身、この数年間に一度ならず見たではないか? 国家と世論は、一人の勇敢な人間の判断を、嫌でも聞かざるを得なかったではないか? この人間は精神力のほかなんの武器も持っていなかった。けれどもそれを公然と頑強に確立したのだ。
・・・ われわれの文化、われわれの人間性によって幾千年の苦しみを支払って築きあげられたすばらしい作品が、もしわれわれが闘わなかったならば、沈没してしまうのだ。・・・ 起て! 生きろ! でなかったら、死ななければならんのなら、立ったままで死ね」 」
『ジャン・クリストフ』第七巻