「人間はどこでも同じだ。腹を決めてかからなければならぬ。世間相手の子供らしい争いに固執してはいけない。平然として、自分自身であらねばならぬ。ベートーヴェンが言ったように、「われわれの生命力をすべて生活に払ってしまったなら、より崇高なもの、より良きもののために、なにが残るか?」 」  第五巻  

 

 

 

 

 

 

 

「理解されなければ、なお結構だ。そのほうがずっと自由である。創造するのは天才の役目だ。内部の法則に従って、あらゆる部分が有機的に組み立てられた、一世界を創造するには、全存在をかけて、その中に生きなければならぬ。芸術家には孤独すぎるということは、絶対にあり得ない。恐るべきは、ものを変形させ、縮めてしまう鏡の中に、おのれの思想を、映して見ることである。成就しないうちに、自分の為すことを、けっして人に言うな。でないと、窮極まで行き遂げる勇気を失ってしまう。そしてもはや自分の思想ではなくなり、他人の情けない思想を、自分のものとして見るようになる。」  同   

 

 

 

 

 

 

 

 

別事 

 

ぼくは過去に、他から、「悪い人間ではない(むしろいい人間だ)」と言われながら、ぼくは好かずに、むしろその存在そのものを否定したい人間らがいた。ぼくがひそかに、だが根深く嫌っていたそういう者らというのは、じっさいに、それ以上に悪人だったのではないか(それにかろうじて気づいたのはほとんどぼくだけだった)、と、昨日あたりから不意に思うようになっている。〔悪人とは、その存在のありようそのものから、人の魂の敷居をわきまえない言動を、必然的に為す者のことである。〕 

 

 

こういう構成(同一節に異質と思われることを記すこと)は、節としては破綻しており、自分でも是非がつかないが、出しておきたい。なぜかはわからない。しかし時宜を感じる。ぼくの意識がトータルなもの(形式・限界を破ったもの)をもとめているからだろう。どうもおとなしいことだけ書いていられない。感情が沸騰してきて、過去に受けた不当なことの清算をしなければ気が済まない。 

 

 

 

 

 

あなた、もうそのくらいでいいでしょう。いまのあなたはわたしと居てくださるのでなければ。「クリストフ」の言葉のようにイデアに集中なさるのでなければ 

 

そうでした